本研究課題は、我が国の多収イネ品種の1つであるタカナリと、その祖先品種(緑の革命の立役者IR8や韓国初の多収品種統一を含む)の個葉光合成能と光合成関連形質の調査・比較・遺伝解析を通して、各形質の選抜由来を探り、多収品種の育種過程における光合成能の重要性を明確にするとともに、タカナリの光合成能の向上に寄与する遺伝変異を探索することで、今後の多収育種の方向を示すことを目的とする。 24年度は、23年度までに作出したコシヒカリ/タカナリ、コシヒカリ/統一、コシヒカリ/IR8のF2集団を栽培・遺伝子型調査し、個葉光合成能に関わる出穂期の止葉の葉身N含量およびSPAD値を調査し比較QTL解析を行った。QTL解析の結果、第4染色体長腕の同領域に3集団に共通して葉身N含量およびSPAD値のQTLを検出した。このQTLはタカナリ型、統一型、IR8型で共に形質値を高める効果を有していた。さらにこの領域についてタカナリ系譜上の祖先品種についてSSRマーカーで遺伝子型を調査したところ、IR8→統一→タカナリを繋ぐ品種において遺伝子型が同じであることが明らかになった。このことから、個葉光合成能に関わるこの領域は、多収品種の育種過程の中で選抜されてきた可能性が示唆され、今後の多収育種においても重要視すべき領域であると考えられた。
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