土壌微生物のよく繁殖した土壌では、微生物による窒素の可給化が活発であるだけでなく、その窒素源として重要な微生物バイオマス窒素も豊富に存在するため、硝酸態窒素レベルが低くても、作物の生育が高く維持される可能性がある。そのことを確かめ、また土壌の微生物バイオマスを増加させるような栽培管理技術を明らかにするため、土壌微生物の繁殖を抑制すると考えられる除草(雑草を根こそぎ除去する雑草管理)や耕起に着目し、これらの管理の有無が、施肥および無施肥条件でトマトの収量に及ぼす影響の調査を開始した。本試験の初年度となる本年度は、圃場を全面耕起したため、施肥の有無と除草の有無を組み合わせた4処理24試験区でトマトを栽培した。病害虫発生の有無も、作物の生育状態を示す一要素として重要であるため、農薬は不使用とした。 オオタバコガや黄化葉巻病などと見られる病害虫が全試験区で発生し、トマト果実の収量レベルは全体として極めて低かったが、施肥と除草の両方を行った処理区では、その他の処理区に比べて収量が高くなった。不耕起や草生栽培、減肥の研究は、これまで個別にはなされてきたものの、施肥、除草、耕起のいずれも行わない栽培や、これらの栽培管理の影響の相互作用についてはほとんど研究がなされていない。本試験では、雑草を一定レベルを超えない範囲で生育させる雑草管理は、耕起条件下で行った場合、少なくとも1シーズンでは、植物の生育にプラスの効果を与えなかった。不耕起条件下での同様の雑草管理の効果を、次年度以降に検討することが必要である。
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