研究課題/領域番号 |
22780018
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中田 美紀 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (90436519)
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キーワード | 雑草 / 無施肥 / 根系 / トマト |
研究概要 |
土壌微生物のよく繁殖した土壌では、微生物による窒素の可給化が活発であるだけでなく、その窒素源として重要な微生物バイオマス窒素も豊富に存在するため、硝酸態窒素レベルが低くても、作物の生育が高く維持される可能性がある。そこで、土壌の微生物バイオマスを増加させるような栽培管理技術を明らかにするため、従来の農法において土壌微生物の繁殖を抑制してきたと考えられる、除草(雑草を根こそぎ除去する雑草管理)や耕起に着目し、これらの管理の有無が、施肥および無施肥条件でトマトの生育や収量に及ぼす影響の調査を開始した。本試験では、特にこうした管理の影響を受けやすい根系について調査した。 トマトの株を中心とした縦10cm、横30cm、深さ30cmの土壌を採取し、含まれるトマトの根を、直径2mm以下、2-5mm、5-10mm、>10mmのものに分類して、それぞれの太さの根が、土壌の表面から0-5cm、5-15cm、15-30cmの層にどれだけ分布するかを、除草や施肥の有無を組み合わせた4処理24試験区について調べた。ただし、直径2mm以下の根については、それ自身の、あるいはそれが繋がっていた、直径2mm以上の根の部分がどの層に分布していたかを調査した。施肥によって、直径5-10mmの根を除いたいずれの太さの根も、伸長が促進された。しかし、その効果の多くは表層5cmに限られており、5-15cmの層では一部の根でのみ伸長が促進され、15-30cmの層では促進されなかった。肥料は表層15cm部分にほぼ均一に撒かれているから、表層5cmで特に伸長が促進された原因は、肥料そのものではないと考えられた。施肥区の表層5cmで、一部の根の伸長が雑草の存在によって促進されていることも、根の伸長が肥料成分以外の何かによってもたらされていることを示唆している。一方、表層から5-15cmや15-30cmの層への根の伸長は、除草によって、特に無施肥下で促進された。 土壌の表層5cmとそれより深い層がトマトの根系形成に及ぼす影響の違いについて、今後、より詳しく調べることが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
種々の理由から、試験区に修正を加えるための全面耕起をしたため、微生物のよく繁殖する土壌環境を与える条件として、不耕起が試行されていない。また、低NO_3土壌で作物の良好な生育を可能にするメカニズムを知るために必要な、土壌分析の一部がやり残されている。
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今後の研究の推進方策 |
不耕起と雑草リビングマルチとの組み合わせが、低NO_3土壌における作物の良好な生育を可能にするのかどうかを明らかにする。また、その際使用する土壌を分析し、低NO3土壌における作物の窒素源として、また、有機態窒素の可給化を担うものとして、土壌微生物バイオマスが重要であるのかどうかを調査する。さらに、低NO_3土壌における作物の良好な生育を可能にするメカニズムの詳細を知るため、今年度の調査でトマトの根の伸長が著しかった表層5cmの土壌が、5cm以上の深さの土壌とどのような違いがあるのか、またそれぞれの層で根が生育した場合のトマトの地上部地下部の生育反応がどのようになるのかを調査する。
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