従来の農法において土壌微生物の繁殖を抑制してきたと考えられる雑草管理の方法を改めることによって,土壌の硝酸態窒素レベルが低くても作物の生育が高く維持されるかどうかを確かめるため,前年度は,雑草管理と窒素施肥の2要因がトマトの収量に及ぼす影響を調査した。本年度は,前年度の試験区をさらに2つに分割し,一方は栽培前に耕起をし,もう一方は不耕起を維持して,雑草管理,耕起,窒素施肥の3要因がトマトの収量に及ぼす影響を調査した。前年度同様,2つの雑草管理のうち1つは,雑草を根ごと引き抜く通常の除草とし,もう1つは,雑草の草マルチ(雑草を地際で刈ってその場に敷く)およびリビングマルチ(トマトの草丈を超えない範囲で生育させる)を併用する管理方法としたが,本年度は,草マルチの厚さを,土壌表面が見えなくなる程度にまで厚くなるよう,試験区周辺の雑草も持ち込んで調節した。 1年間の不耕起はトマトの収量に影響を及ぼさなかった。雑草でマルチをした区では,窒素施肥によって,茎葉乾物重と果実収量がともに増加したが,雑草マルチをしなかった区では,窒素施肥によって茎葉乾物重のみが増加し,果実収量は変化しなかった。また,雑草マルチは,窒素施肥区においては,茎葉乾物重,果実収量をともに増加させたが,無施肥区ではいずれも変化させることはなかった。本研究によって,雑草マルチは,茎葉の生育を促進する効果に対する果実の生育促進効果の比率が,窒素肥料より高いことが示唆され,窒素肥料より効率的に果実の生育を促進すると考えられた。しかし,その効果が発揮されるためには,少なくとも本研究の土壌条件や栽培条件においては,土壌にある程度の可給態窒素が補われる必要があることが示唆された。雑草マルチの効果をより高め,窒素施用量をより少なくするためには,雑草マルチを施す時期を早めるなどの改善策を検討することが必要である。
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