研究概要 |
ブドウでは,ジベレリンによる単為結果誘起(種なし化)は非常に重要な技術であり,実用技術として広く用いられているが,その作用機構に関しては未だ不明な点が多い.そこで本研究では,ブドウの植物生長調節剤による他動的単為結果誘起機構の解明を目的とし,次世代シークエンサーを用いた大規模EST解析により他動的単為結果誘起に関係している遺伝子の同定を試みている.本年度はジベレリン処理果実に関して次世代シークエンスを行った. 巨峰の満開日に25ppmのジベレリンを処理後,満開日(Od),処理1日(1dGA)および2日後(2dGA)の果実を採取した.これらの果実から全RNAを抽出後,それらを用いて次世代シークエンサーによる3'-EST解析を行った.シークエンスの結果,Odのサンプルから223212個,1dGAから226900個,2dGAから163278個の合計625001個のリードが得られた.これらのリードに関してPolyAや低QV領域のトリム,short readの削除等のpre-processingを行った後MIRAによるアセンブルを行い,29215個のContigおよび107840個のSingletが得られた.Contigの平均長は506bpであり,coverage(Contigあたりのリード数の平均)は17であった.これらのContigを構成するリードをサンプルごとに分類し,各Contigの発現パターンを調査した結果,ジベレリン処理により発現が増加するContigは966個,減少するContigは1503個であった(2倍以上変化,ρ<0.05)。これらの増加した遺伝子群にはピストンが多く含まれており,それ以外にもフラボノイド生合成系遺伝子(CHS, CHI, F3H, DFR)などが含まれていた。一方,減少したものには熱ショックタンパク質などの分子シャペロンが多く含まれており,それ以外にもユビキチン関係の遺伝子などが含まれていた。これらの発現変動遺伝子が単為結果にどのように関係しているかは未だ明らかではないが,本年度を行う予定の詳細な発現解析などを通して今後明らかにしていく予定である.
|