研究課題/領域番号 |
22780023
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
福田 文夫 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教 (60294443)
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キーワード | モモ / 果実品質 / 開花日 / 糖代謝関連酵素 / ジベレリン / 糖蓄積 |
研究概要 |
開花日が異なる果実間で、果実肥大および収穫果の品質、特に糖度への影響を調査した。本年は、開花が遅く、開花日の幅が小さかったが、前年の結果と同様に、開花日が遅いほど果実糖度が有意に高かった。いずれの開花日の果実も、果肉の糖の蓄積様相は果実発育第3期半ばから急激に変化し、スクロース含量の割合が高まったが、開花の早かった果実では、ソルビトールやスクロースの蓄積がほとんど停止していたのに対し、開花の遅い果実では、収穫適期までこれらの糖の蓄積が続いた。モモの収穫果の糖度と密接な正の相関関係を示した果肉のスクロースリン酸合成酵素の活性を開花日間で比較したところ、開花の遅い果実の方が早い果実よりも高い傾向が認められ、開花の遅い果実が高糖度となることには、糖代謝酵素活性、特にスクロース合成に関連する酵素の活性が収穫期まで高く維持されることが関係していると推察された。 モモ'清水白桃'で果実発育第2期後半の種子と果肉のジベレリン含量を測定した。その結果、果実発育第2期半ばまでは、種子特に胚の初期成長に合わせて、ジベレリン含量が高まる一方、果肉ではその時期にジベレリン含量がほとんど変化しなかったが、第2期後半にジベレリン含量が急速に高くなった。このことは、第2期初めまでは種子のジベレリンによって果実発育が維持されていたのに対し、その後急激に果肉のジベレリン生成が促され、果肉のジベレリン生成能が果実への養分分配に密接に関与していることを裏付けた。 以上のことから、肥大が収穫期まで継続した開花の遅い果実で、果肉のGA生成が旺盛であったとみなされ、このジベレリンによって、果実への取り込みが持続するとともに、糖代謝酵素の活性を増大させて、果実への糖蓄積が高まると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開花日調査果の結実率が悪く、各開花日の果実数を十分に確保できなかったが、2品種で同様の実験を行うことで、同じ傾向を示すことや、種子の発育が優れるほど種子からのGA供給が高まり、急速な肥大を再開する前に果肉のGA含量が高まること々示すことができ、また糖度と果肉の糖代謝酵素活性との間に関連があることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
果実発育第2期に、種子発育に及ぼす開花日の影響を明らかにするとともに、果実発育第3期を中心に、開花日の異なる果実について、果実のジベレリンの定量と糖代謝酵素活性を測定して両者の関連性を明確にする。また、これらの結果をモモ栽培に活用し、果実生産の高品質安定生産にむけた技術化も進める。
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