モモの果実品質のばらつきと開花日との関係を明らかにすることを目的として、本年度は、第1に開花日が異なると、種子成長が異なり、生理的落果の発生やその後の果実発育に変化が生じることが知られていることから、バイオアッセイ法を用いて、胚の生長に基づく種子から果肉へのジベレリン供給を定量するとともに、その後の果肉自体でのジベレリン生成過程に直結していることの証明、第2に開花日が収穫果の品質に及ぼす影響の調査を継続し、普遍性があることの確認を行った。 その結果、種子のジベレリン含量は、胚の生長が旺盛なほど高く果肉へのジベレリン供給が続くと考えられた。一方、果肉のGA含量は種子のGA含量が高まった時期には、胚の長さと関連が認められたが、その1週間後には胚の長さに関係なく、3倍程度に急速に高まり、ほぼ一定となった。このようなことから、種子から十分にGAが供給されると、果実肥大を再開する第3期変遷前に果肉でGAを早々に形成できるようになり、果肉に養分を収集できるようになると考えられた。一方、開花日の早い果実は、開花日の遅い果実と異なって落果したことから、種子特に胚の発育が劣りやすいことが明らかとなった。これらのことから、開花日の早い果実は、第1期の肥大は旺盛なものの、緩慢なジベレリン生成によって第2期以降の果実発育や、昨年明らかにしたように第3期の糖蓄積過程の持続が開花日の遅い果実よりも劣ることにつながったと推察された。 開花日の早い果実は、収穫果の糖蓄積が劣るだけでなく、果肉障害の発生も多く果肉軟化の様相にも変化が生じることが示された。 以上のように、開花日の早晩は、モモにおいて果実の糖蓄積に関して、果実肥大および種子および果肉のジベレリン生成を通して影響を及ぼすことが示唆された。
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