研究課題/領域番号 |
22780025
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
鳴海 貴子 香川大学, 農学部, 准教授 (30469829)
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キーワード | 花き / 花弁表皮細胞 / 形態形成 / 園芸 / CRES-T法 |
研究概要 |
カーネーションへのTCP3SRDX遺伝子導入操作より抗生物質耐性を示す82個の多芽体が得られ、多芽体から発生したシュート78個体で導入遺伝子が検出された。継代培養を繰り返し、培養条件下で表現型を調査したところ、葉が肥厚し葉縁辺が内側に湾曲する個体群、葉が肥厚し葉の先端がカール様に巻かれている個体群、非形質転換体と同等の葉を有する個体群に分けられた。葉が肥厚している両個体群の中には、葉の一部がカルス化する個体も認められた。シロイヌナズナ由来のTCP3SRDXを導入した事によって葉の形態が変化した事から、カーネーションにもTCP3と相同な転写因子が葉の形態を制御していることが示唆された。 トレニアから単離した花弁表皮細胞形態形成関連転写因子をコードするTfMYBML1、TfMYBML2およびTfMYBML3遺伝子の機能解析を行うため、CaMV35SプロモーターにTfMYBML1~3を連結した3種の導入遺伝子とTfMYBML1~3-SRDXを連結した3種の導入遺伝子、計6導入遺伝子をアグロバクテリウム法によりトレニアへ導入した結果、導入遺伝子を保持しているTfMYBML1、TfMYBML2およびTfMYBML3過剩発現体、TfMYBML1SRDX、TfMYBML2SRDXおよびTfMYBML3SRDX形質転換体を各20個体以上獲得した。これらの個体を順化・鉢上げし、花の形態を調査したところ、TfMYBML1SRDX形質転換体では花弁のブロッチの領域が拡大する表現型を示し、TfMYBML2SRDXおよびTfMYBML3SRDX形質転換体は花弁先端や唇形部の一部で花弁表皮細胞の形成が認められない表現型を示した。TfMYBML1~3過剰発現体に関しては、顕微鏡での形態観察では野生型と大きな違いが認められなかったため、導入遺伝子発現量の多い個体について再調査する必要があると考えられた。 TfMYBML1~3の発現部位や時期を特定するためにTfMYBML1~3の推定プロモーター領域をトレニアから単離し、塩基配列を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、トレニアにおいてTfMYBML1、2のプロモーター単離から進める予定だったが、新たにTfMYBML3を単離したことから、CsMV35Sプロモーターを使用した解析の方が早く解析できると考え各形質転換体作出に取り組んだ結果、解析に十分な数の形質転換体を獲得することができた。さらに、カーネーションにおいてもTCP3SRDX導入により葉の縁辺が変化した形質転換体が得られており、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、選抜した形質転換カーネーションおよびトレニアを順化・鉢上げし、SEM等を用いた詳細な形態解析を行う予定である。さらに、単離したTfmYBML1~3プロモーター領域にレポーター遺伝子であるGUS遺伝子を連結し、遺伝子導入操作を行い、遺伝子発現部位の調査を行う予定である。 問題点とその対策としては、形質転換カーネーションにおいて順化・鉢上げから開花に至るまで日数を要すると考えられるため、葉の形態に焦点をあて、形態観察を行う予定である。さらに、トレニアにおいてはこれからGUS遺伝子形質転換体を作出するため、順化・鉢上げが期間内に間に合わなかった場合には、培養器内で形成した花芽を用いて解析を行うことを考えている。
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