研究概要 |
【自家不和合性反応強度に関する品種間変異】自家不和合性反応の強さが不明なテッポウユリ3品種('ホワイトタワー','ホワイトエレガンス','ホワイトトライアンフ')について,交配実験により自家不和合性の有無および強度を調査した.他家交配には'ジョージア'の花粉を用いた.'ホワイトタワー'は自家結実率が71.4%と高い割合で完全種子を形成し,自家不和合性打破に有効な花柱切断処理を行うと,自家結実率は100%となった.しかしながら,自家交配時の平均種子重(0.39g)は他家交配時(0.99g)に比べて低く,本品種は自家不和合性反応が弱い,もしくは部分的な自家和合性であることが示唆された.一方,'ホワイトエレガンス'は自家種子を形成せず,完全な自家不和合性であると考えられる.'ホワイトトライアンフ'はテッポウユリとして取り扱われているが,自家交配,他家交配ともに全く結実せず,植物体の形態からも,他のユリ種との交雑によって作出された可能性が考えられた. 【テッポウユリ自生集団の遺伝的多様性】自生地のテッポウユリは自家不和合・和合性個体の頻度分布が集団間で異なっており,遺伝的多様性の違いが示唆されている.そこで前年度開発した4個のSSRマーカーに今年度新たに開発した3マーカーを加えた計7マーカーを用いてテッポウユリ2集団(屋久島集団(自家和合性個体:多い),石垣島集団(自家和合性個体:ごく僅か))の遺伝的多様性を調査した.石垣島集団では観察されたヘテロ接合度は平均0.726,遺伝子座当たりの平均対立遺伝子数は8.4であった.対して,屋久島集団では観察されたヘテロ接合度は平均0.191,遺伝子座当たりの平均対立遺伝子数は2.1であり,また,7遺伝子座中3遺伝子座がmonomorphicであった.以上の結果から,屋久島集団は石垣島集団にくらべて遺伝的多様性が低いことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自生地由来の個体だけでなく,園芸品種から新たに自家結実可能な品種が見つかったことは,今後の自家不和合性メカニズム研究にとって非常に有益である。また,開発したマーカーを用いた解析によって,自家和合性集団成立要因の手がかりを得ることができた.
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