ドイツにおける樹木葬墓地普及の要因を分析するとともに、日本における課題を具体的に整理することを目的とした。 ドイツにおける樹木葬墓地誕生の経緯を調査し、その①歴史的背景、②空間的特徴、③管理方法で整理した。ドイツの2種類の樹木葬墓地運営会社である、「Friedwald」と「Ruheforst」における最初の樹木葬墓地ReinhardswaldとHuemmelを対象にケーススタディを行った。また、日本における課題を整理するため、日本で最初期の樹木葬墓地である知勝院および天徳寺にてケーススタディを行った。 ①歴史的には、ドイツにおいてロマン主義の流れで発生した森林墓地が、近年の樹木葬墓地の原型となっている。ドイツでは既に森林と墓地が結びつく下地が100年かけて整っていたといえる。それだけでなく、ドイツの樹木葬墓地も、実際にはReinhardswaldがもつ特殊な地域的、政治的事情により実現したものであることも明らかになった。 ②空間的特徴として、ドイツでは、墓地利用に適した姿の森林区画が樹木葬墓地に選定されるのに対し、日本では将来の森林の姿が想像できないまま樹木葬墓地の区画が拡大している。これは、植樹行為と樹木そのものに価値がおかれること、墓地購入者数に応じた面積しか森林の墓地転用が認められないこと、美しい森林イメージが共有されていないことと関係している。 ③森林管理では、ドイツの樹木葬墓地は、現在の近自然型林業による長伐期施業を前提としており、墓地利用は森林の多面的利用の一形態として位置づけられている。管理主体は森林官であり、樹木葬墓地は他の施業林と組み合わせた森林経営に組み込まれている。一方で、日本の森林型の樹木葬墓地では、寺院が所有する森林が墓地へと転用され、一から山づくりが行われる。森林の管理主体は僧侶であり、里山保全という枠組みの中で、墓地整備としての森林管理が行われる。
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