研究概要 |
カキは果実の発達に伴い果肉中のタンニン細胞といわれる特異な細胞に、渋み物質であるプロアントシアニジン(PA)を多量に蓄積する。果肉で特異的に働くPA生合成の転写因子DkMYB4について、発育初期の低温処理により完全甘ガキにおいてもその発現が誘導される事、また、DkMyb4がABAシグナル伝達に関わる転写因子DkbZIP5により制御されていることを明らかにしこれらの研究成果をとりまとめた。また、中国タイプの完全甘ガキの甘渋性を支配する遺伝子座に連鎖した分子マーカーの単離とその育種学的利用に関する論文をとりまとめた。現在はPAの蓄積に伴って発現が変化するいくつかの遺伝子(DkSCPL1,DkSCPL2,DkDHD/SDH,DkGST,DkPer1,DkF3GalT)のについて、これらの機能解析のための植物発現用のベクターを構築して、カキおよびキウイフルーツへの形質導入を行っている。 ブドウの果皮色を決める赤や紫などの色素はアントシアニンである。この色素の蓄積には植物ホルモン、光(UV-B)、糖の転流量、温度など様々な内生あるいは外生の要因が関わっている。今回は、アントシアニンの蓄積を促進するABAと抑制するオーキシンを赤色系ブドウ'安芸クイーン'の着色開始期であるベレゾーン期周辺に処理し、これら植物ホルモンのアントシアニン蓄積への効果を調査するとともに、フラボノイド生合成に関連する遺伝子群についてq real-timePCRによる発現解析を行った。その結果、ABA処理はアントシアニン蓄積に関わる遺伝子群を転写因子MybAを介して上方制御するが、主に深色となる遺伝子の発現を高めるため、濃度によっては過着色となり適当な色の果実が得られない可能性が示唆された。また、Auxin処理では遺伝子群の発現が抑制され結果として果実の着色が抑制された。
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