平成23年度までに、実際の森林環境にて調査をおこなった。調査地として、奈良県吉野町、大分県大分市など、4ヶ所の散策に適した森林を選択し、公募により男子大学生および大学院生、計48名を調査の参加者として依頼した。短期的・継続的なストレス低減効果を調べる調査票については、前年度に準備した①プロフィール調査票、②POMS(以上、①、②:ストレス低減効果調査票)を使用して調査を行った。さらに、個々人の③生活習慣、④レジリエンス、⑤ストレスコーピング、⑥QOL(以上、③~⑥:コーピング指標調査票)を同一の被験者にあらかじめ実施して、ストレスコーピングの程度について調べた。 平成24年度は森林浴の短期的および継続的なストレス低減効果の分析を行った。結果的に、森林浴の前後で複数の心理的指標が改善されるなど、短期的な森林浴効果が明らかにされた。しかし、その一方で、長期的な森林浴のストレス低減効果については明確な結果が得られなかった。これについては、(効果を調べるための)出口となる心理的指標(調査票)について、さらに精査して他の調査票を使用するなどして、改めて実験プロトコルを組み立て、研究を行う必要があることが示唆された。また、ストレス低減効果と各コーピン指標との関係を調べることで、ストレス低減効果のさらなる高度発揮を可能とする、活用プログラムおよび空間整備の方略を提示することが可能になった。その成果は、「エビデンスからみた森林浴のストレス低減効果と今後の展開(新興医学出版)」として、図書として出版された。今後、これらの成果を基軸として、全国各地の森林セラピー基地または都市公園などにて、効率的な業務計画、規格制定への貢献に繋がることを目指したい。
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