研究概要 |
トレニア‘クラウンミックス’白花系統の花弁のカロテノイドによる濃着色部および白色部において,HiCEP法(High Coverage Expression Profiling)による差次的発現遺伝子の単離・解析を試みた.HiCEP法は制限酵素と選択的プライマーの組み合わせによって発現している遺伝子を網羅的にプロファイリングするcDNAを用いたAFLPの一種であるが,定量性に優れているという特徴を持つ.着色部と白色部の発現遺伝子のプロファイリングによって全体で約19000の発現遺伝子がピークとして検出された.これらピークの高さを着色部と白色部で比較したところ,着色部で白色部の2倍以上の発現量が得られたピークが300ピーク,白色部で着色部の2倍以上の発現量が得られたピークが60ピークであった.昨年度塩基配列を決定した9倍~3.5倍の差を示す34ピークに加え,本年度は着色部のみで発現していた6ピークを選び出し,解析を行った.着色部で高い発現量を示したピークおよび着色部のみで発現していたピークにはカロテノイド生合成・蓄積関連遺伝子のホモログ3種類(Fibrillin, NXS, LCYB)に加え,複数の光合成関連遺伝子および脂肪酸代謝関連遺伝子等が含まれていた.それぞれの遺伝子のシロイヌナズナオルソログを解析した結果,大部分の遺伝子から色素体移行シグナルペプチドをコードする配列が検出された.このことから,トレニア花弁の着色部ではカロテノイド生合成・蓄積関連遺伝子だけでなく色素体に局在するタンパク質をコードする遺伝子の発現が上昇していることが明らかになった.
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