研究概要 |
イネいもち病菌に供与DNAとエンドヌクレアーゼ遺伝子またはその酵素のみを共導入して,ゲノム上に二本鎖切断を導入することで,その切断点を起点とした相同組換えを誘導し,同時に相同組換えを促進する手法を組み合わせた高頻度ターゲッティング法を開発する.いもち病菌において,二本鎖切断により誘導された相同組換えを検出するために,YFP遺伝子とブラストサイジン耐性遺伝子を融合した蛍光薬剤選抜マーカー遺伝子を鋳型として用い,2つのプラスミド(pTG,pRS)からなる相同組換え検出系(TG-RS)を構築した.本検出系をPEG法によりいもち病菌に導入し,ゲノム中の各検出マーカー遺伝子のコピー数をサザン解析により調査した.TG-RS導入いもち病菌をゲノム損傷試薬(methyl methane sulfonate, methyl vilogogen)にて処理すると相同組換えが生じ,非破壊のモニター系として機能することを確認した.相同組換えを誘発するストレスを与えた場合についてもYFP蛍光が生じ,その出現率を算出した.その時,供与DNAであるRSのコピー数が多いほど,相同組換えが生じ易いことが示唆された.最終的に6系統(TR9,12,13,15,18,22)の高感度検出系統を樹立した.TG-RSの導入により感染力が低下あるいは喪失していないことを確かめるために,イネ品種日本晴へ接種試験を行った.特に相同組換え効率が高かったTR9系統よりプロトプラストを作成し,低出現頻度の制限酵素遺伝子I-Sce Iや市販の制限酵素などを用いて,いもち病菌へのヌクレアーゼ導入方法を検討し,最適条件を設定した.現在,遺伝子ターゲッティングの基礎研究において実績のあるzinc-finger nuclease (ZFN)を標的配列(YFP遺伝子内)上に結合するように設計し,TG-RS導入株より作成したプロトプラストへの導入を行っている.
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