研究課題
植物病原体は宿主植物への感染時にエフェクターと呼ばれる分泌タンパク質を宿主細胞または細胞間隙に注入することによりその病原性を発揮する。一方あるエフェクターを認識する抵抗性タンパク質遺伝子を宿主植物が保有している場合、そのエフェクターは植物の抵抗性を誘導する。平成23年度までにいもち病菌の3つの非病原力エフェクタ-AVR-Pia、AVR-Pii、AVR-Pikと1つの病原性分泌タンパクMC69の同定に成功するとともに、イネにおいては、いもち病抵抗性(R)遺伝子Piaの単離同定に成功している。また、 MC69がイネいもち病菌およびウリ類炭疽病菌の感染に共通して必要な病原性分泌タンパク質であることを明らかにした(Saitoh et al., 2012 PLoS Path. 8:e1002711)。平成24年度の研究により、イネのRタンパク質Pik1が直接的タンパク質相互作用によってAVR-Pikを認識することを明らかにした(Kanzaki et al., 2012 Plant J. 72:894)。また、R遺伝子Piiの単離同定に成功した(Takagi et al., New Phytol. 投稿済)。HAタグ付きMC69(MC69-HA)タンパク質を過剰発現する形質転換イネ懸濁培養細胞または3xFLAGタグ付きウリ類炭疽病菌由来MC69(CoMC69-3xF)を一過的に過剰発現させたベンサミアーナタバコ葉を供試し、In planta共免疫沈降法によってMC69ターゲット因子候補を見出した。
2: おおむね順調に進展している
PikがAVR-Pik産物とのタンパク質直接的相互作用を介して抵抗性を獲得し、AVR-Pikと共進化していること、Pik1の変異がAVR-Pikアリルに対する抵抗性認識に重要な役割を担っていることを明らかにした。In planta共免疫沈降法により、MC69ターゲット因子候補を見出した。
AVR-PikとPikの関係においては、AVR-PikがPik1のCoiled-coilドメインに結合することを明らかにした。同様にAVR-PiaとPia、AVR-PiiとPiiの結合様式や結合部位を明らかにし、各AVRとそれらに対応する各R遺伝子産物との相互作用によって誘導される抵抗性の分子機構解明を目指す。さらに、AVR-Rの相互作用が直接的な結合によるものか、あるいは別のターゲット因子を介するのかを調査する。一方、MC69はエフェクタ-か、あるいはいもち病菌のエフェクタ-分泌機構に関与する可能性も示唆されている。したがってMC69については、いもち病菌由来およびイネ由来ターゲット因子の両方の存在が推察できる。そこで、AVR-Pia、AVR-Pii、AVR-Pik、MC69のターゲット因子を同定し、それらの相互作用を解明する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
The Plant Journal
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http://genome.ibrc.or.jp/
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