1.xopR遺伝子を導入した形質転換イネを利用したイネ防御応答の解析 (1)XopR発現が植物体内での細菌増殖に及ぼす影響についての検討するため、DEX処理により形質転換イネにおけるxopR遺伝子の発現を誘導後、白葉枯病菌野生株を接種した。その結果、Mock処理区におけるよりも顕著な病斑の伸長がみられ、XopRのイネ自然免疫抑制への関与の可能性が示唆された。 (2)XopR発現により影響を受けるイネ防御関連遺伝子の発現動態を調べるため、形質転換イネをMockあるいはDEX処理直後、および24時間後のイネ葉をサンプリングし、マイクロアレイ解析を行った。その結果、既知防御関連遺伝子のPR-1遺伝子やペルオキシダーゼ遺伝子に加え、エチレン応答への関連が予想されるAtERF5と相同性を有する遺伝子やOsERF3遺伝子の発現がMock処理区における2分の1以下にまで抑制されていることが確認された。xopR遺伝子導入形質転換シロイヌナズナにおいて、シロイヌナズナのエチレン処理時に観察されるトリプルレスポンスを確認している。エチレンは植物の防御応答シグナル物質の1つとして知られる。これらのことから、白葉枯病菌タイプIIIエフェクターXopRはエチレンを介した植物の防御応答シグナルカスケードを攪乱することで自然免疫を抑制する可能性が示唆された。 3.OsBIPP2C1の機能解析 OsBIPP2C1のPP2Cアルカリフォスファターゼ活性をXopRが阻害するかについてin vitroで検討するため、XopRの組換えタンパク質の発現・精製を試みた。Hisタグ標識をした組換えタンパク質を可溶性タンパク質として得ることができなかったため、標識タグをGSTに変更したが、可溶性タンパク質を得ることができず、XopRがPP2C阻害活性を有するかを明らかにすることはできなかった。
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