昨年度までの結果から、イネへの侵入能を欠損したいもち病菌変異体をイネ葉鞘裏面に接種した場合、イネ細胞のミトコンドリア凝集反応が見られないことがわかっていた。そこで本年度はまず、ミトコンドリアの動態を非親和性菌侵入前後(接種18時間後)から経時的に観察した。その結果、菌の侵入に伴うイネ細胞のミトコンドリアの凝集反応には付着器方向への放射線状の凝集(第1凝集)と被侵入細胞方向への直線状凝集(第2凝集)の2つのパターンがあることがわかった。第1凝集は被侵入細胞だけでなく、付着器と接した非侵入細胞でも観察され、このことから、ミトコンドリアの凝集反応は菌の侵入によって起こるが、菌の物理的侵入に依存しない反応であることが示唆された。また、付着器と接していない被侵入細胞の周辺細胞では、第2凝集が観察され、その凝集傾向は被侵入細胞の過敏感細胞死でより強くなった。被侵入細胞が過敏感反応した後では、付着器と接した非侵入細胞においても第2凝集が観察されたが、第1凝集パターンのままの細胞も観察されたことから、被侵入細胞の過敏感細胞死に伴い、付着器と接した非侵入細胞では第1凝集から第2凝集への移行が起こったと考えた。一方、イネ細胞へ過敏感反応を誘導するいもち病菌変異体ssd1では親和性組み合わせでも第1、第2凝集ともに起こった。以上の結果から、ミトコンドリア凝集反応が抵抗性反応に密接に関連していると考え、活性酸素検出用蛋白質やCa^<2+>検出用蛋白質を導入したイネを作製するとともに、現在、これらのタンパク質を導入したいもち病菌を作製しているところである。 加えて本年度は、ジャスモン酸(JA)誘導性プロモーター下でGFPを発現させるイネを用いていもち病菌接種後の細胞レベルでのJA分布を観察する方法を検討し、その前段階としてJAが蓄積することが知られている傷害処理後のGFP誘導を調べた。
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