Bombyx mori macula-like virus(BmMLV)は、カイコ培養細胞から発見された新規の持続感染型RNAウイルスであり、研究代表者らはこれまでに本ウイルスの感染していない唯一のカイコ由来BmVF細胞の樹立、及び本ウイルスの感染性クローンの構築を行って来た。本ウイルスは既に殆ど全てのカイコ由来培養細胞へ混入しているが、培養液のサプリメントや桑を初めとする各種植物から本ウイルスは検出されず、未だその由来は明らかではない。一方で、カイコ由来培養細胞は外来タンパク質発現系であるバキュロウイルス発現系における宿主培養細胞として獣医薬の生産等に利用されており、産生する組換えタンパク質の安全性の観点から本年度はまず、BmMLVの宿主域に関する解析を行った。その為にブタやウシ、ハムスターを始めとする種々の培養細胞へBmMLVを感染させ、本ウイルスがこれらの培養細胞で増殖するかどうかリアルタイムPCRによって解析した。その結果、BmMLVは供試した全ての哺乳類培養細胞、及びカイコ以外の培養細胞では増殖しないことを明らかにした。一方で、これら培養細胞への吸着能は、カイコ由来培養細胞と殆ど変わらないことが明らかとなり、ウイルス感染の吸着以降のプロセスで宿主域が決定していることが示唆された。更に、既に樹立したBmMLV陰性カイコ由来培養細胞株が、上述のバキュロウイルス発現系で有用かどうかを明らかにするために、バキュロウイルスの増殖能や組換えタンパク質の発現量、翻訳後修飾の有無や細胞外分泌について調査した結果、本細胞はバキュロウイルス発現系で非常に春用であることを明らかにした。これらの結果に関して4つの学会発表を行為、現在2つの投稿論文を準備している。
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