研究課題/領域番号 |
22780052
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研究機関 | 株式会社生命誌研究館 |
研究代表者 |
尾崎 克久 株式会社生命誌研究館, 研究部門, 研究員 (60396223)
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キーワード | アゲハチョウ / 味覚受容体 / 食草選択 / 産卵行動 / GPCR / 7回膜貫通型受容体 |
研究概要 |
ナミアゲハcDNAライブラリーから発見した7回膜貫通型受容体について、機能解析を完了した。 1.昆虫培養細胞とバキュロウイルス発現系を用いたカルシウムイメージング法により、ミカンの葉に含まれている化合物のうち「シネフリン」に特異的に応答する化学受容体であることを解明した。 2.同受容体遺伝子の2本差RNAを合成し、ナミアゲハ蛹に注射によって導入することで、発現量を有意に抑制できることを確認した。鱗翅目昆虫ではRNAiが難しいとされているため、数少ない成功例となる。 3.電気生理実験により、RNAiで同遺伝子の発現を阻害した場合にはシネフリンへの感受性が特異的に低下することを確認した。 4.RNAi処理を施したナミアゲハで産卵行動実験を行った結果、シネフリンへの感受性低下により、シネフリン-カイロイノシトール混合溶液への産卵活性が有意に抑制されたことを確認した。 以上の結果から、ナミアゲハ7回膜貫通型受容体遺伝子はシネフリン特異的味覚受容体であり、産卵行動の誘発に関与していることが明らかになった。研究計画より大幅に進展しており、Nature Communicationsにて論文として公表済みである。 クロアゲハ・シロオビアゲハのcDNAライブラリーから7回膜貫通型受容体遺伝子の候補を検出したので、ナミアゲハ受容体と同様の手法で機能解析を試みる。これらアゲハチョウからはChemosensory Protein遺伝子を13種類ずつ発見しており、そのうち10種類がナミアゲハのオルソログであるため、これら遺伝子を用いて3種間の比較を行い、進化的意義を考察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画では、3年間で受容体遺伝子の発見とリガンドの特定を目標としていたが、in vitoro・in vivoの機能解析を通じて産卵行動に関与することまで解明できた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、特定ゲノムの支援を受けてナミアゲハのゲノム解読が進行している。昆虫の味覚受容体遺伝子は実験的手法による探索は困難で、ナミアゲハのシネフリン受容体を除いて全てゲノムがら情報学的手法によって発見されている。ゲノム解読が進めば、新規の味覚受容体遺伝子の発見に期待が持てる。 複数の味覚受容体遺伝子が発見されれば、アゲハチョウの食草認識機構の解明に重要な手がかりになると思われる。
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