ナミアゲハから発見した新規の味覚受容体遺伝子が、産卵刺激物質の一つであるシネフリンに特異的に応答することを解明し、23年度に論文として報告している。遺伝子・細胞・神経・行動と、生命現象全体を網羅的に機能解析し、食草選択との慣例精を証明した内容は、当初計画していたものより進展したものである。 24年度は、当館に次世代型シーケンサーMiSeqが導入されたため、組織特異的なRNA-seqを行うことが可能となり、従来行ってきたキャピラリー式シーケンサーを用いたEST解析とは比較にならない速度で遺伝子探索が可能となった。ナミアゲハとシロオビアゲハのドラフトゲノムにRNA-seqの配列をマッピングして遺伝子コード領域を探索し、アミノ酸配列に変換できる部分を用いて構造予測を行い、膜タンパクをコードする配列を収集した。これらを用い、5~9回の膜貫通領域を持つと予想される遺伝子を取り出し、膜貫通領域とループのトポロジーから昆虫化学受容体を絞り込んだ。これにより、新規の味覚受容体遺伝子をナミアゲハから36個、シロオビアゲハから42個見つけることができた。既知遺伝子とのホモロジーを手がかりとする探索方法では昆虫化学受容体を検出することは難しい事が知られているが、本研究で行った取り組みにより、効率よく高精度に候補遺伝子を発見することができ、計画より大きく進展した内容となった。 現在、ナミアゲハのシネフリン受容体の機能解析と同じ手法を用い、これら新規遺伝子の機能解析に取り組んでいる。 今後は、1. TALENなど新規の解析技術の導入と、2. 多種アゲハチョウのゲノムを解読し、ゲノムデータベースとして構築することで新規遺伝子の探索や比較ゲノム解析による食性進化の解明を促進する計画である。
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