研究課題
本研究では、光合成機能と栄養素の体内リサイクル機構の両面から、植物の生長や環境応答性に深く関わる、植物特有のオルガネラ「葉緑体」のオートファジーによる分解の制御機構について、モデル植物シロイヌナズナを材料に分子レベルで明らかにすることを目的とした。葉緑体オートファジーにはRCBを介した部分分解と葉緑体本体の分解の2つの様式があるが、ここでは特に葉緑体本体のオートファジーに焦点を絞り、液胞内腔に至るまでの輸送形態(膜動態)や輸送に必須な遺伝子群や制御機構について明らかにするため、本年度は以下の2項目について解析を進めた。(1)ライブセル蛍光イメージングによる葉緑体の液胞への移行様式の解析葉緑体は液胞膜の陥入、すなわちミクロオートファジーの様式で液胞内部に取り込まれていることが、申請者らの予備的な観察結果から示唆されていた。この点について検証するため液胞膜とオートファゴソーム膜を同時に蛍光で可視化する形質転換体の作出をすることにした。具体的にはGFP-ATG8とRFP-γ-TIP、RFP-ATG8とGFP-γ-TIPを共発現する形質転換体の作出を進めた。各発現ベクターの構築と形質転換については終了し、現在はより蛍光強度が強い個体を選抜中である。(2)葉緑体本体のオートファジーに必須な遺伝子群の特定これまでに酵母とシロイヌナズナでのゲノム配列の比較から、マクロオートファジーに必須の遺伝子ATG群32種のうち、16種について植物ホモログ遺伝子AtATG群が同定されている。これらの遺伝子を欠損する変異体における葉緑体数の減少をモニターすることで、葉緑体オートファジーに必須なAtATG遺伝子群を特定することにした。今年度は各ATG遺伝子破壊変異体の単離、ならびにそれらをバックグラウンドに葉緑体移行GFPを発現する形質転換体を作出する準備を進めた。
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Plant Physiol
巻: 154 ページ: 1196-1209