研究概要 |
高等植物の光合成光化学系によるATP生産は,現在の大気条件下や将来的に予測される高CO_2環境下の光合成速度を律速する有力な候補である.これを司るのは葉緑体チラコイド膜に存在する葉緑体型ATPase複合体であり,そのサブユニット構成はは核コード3分子種および葉緑体コード6分子種となっている.このように葉緑体型ATPaseのサブユニット構成は非常に複雑であり,量的増強を試みた研究例は世界的に見てもこれまでにない.そこで,イネにおける葉の光合成能力の増強をねらい,核コードのサブユニットの過剰発現を行うこととした. はじめに、ATPC(Os07g0513000),ATPD(Os02g0750100)およびATPG(Os03g0278900)の全長cDNA配列を,イネゲノムデータベースの情報(RAP-DB;http://rapdb.dna.affrc.go.jp/)をもとに,5'-および3'-RACE法を用い特定した.次いで,これらを緑葉で強力に発現するイネRBCSプロモーターの制御下で3重過剰発現するベクターを構築することを試みたものの,複雑な構造を有し,また,サイズが非常に大きくなるため,現在のところ成功には至っていない.このため,各サブユニットの結合とATPase活性の制御を担っているATPDを単独で過剰発現するベクターのまず構築をした.より強力な遺伝子発現を狙うため,イネRBCSのプロモーターおよび5'-UTR領域からシームレスにATPDの開始コドンが始まるようなコンストラクトとすることができた.このベクターを用い,現在#系統の形質転換体が得られている.
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