研究概要 |
植物寄生性ネコブセンチュウ感染と共生シグナル伝達系との関連を調べるため、平成23年度にはモデルトマトマイクロトムのSYMRK-RNAi系統を作出し、ネコブセンチュウ感染実験を行った。発現抑制の度合いが高かった系統と野生型マイクロトムを用いて、感染4週間後のゴール形成数を比較した。感染実験は独立して3回以上行った。根あたりのゴール形成数は野生型で3.4±0.7個であったのに対して、RNAi系統では1.3±0.5個と有意に減少していた。ゴール内でのネコブセンチュウの発達段階を観察したところ、野生型ゴール内ではJ4ステージの雌成虫が確認できたが、RNAi系統ゴール内では雌成虫は存在せず、発達が途中で止まっている様子が見られた。更に、共生シグナル伝達系の他の遺伝子の関連について、毛状根形質転換法を用いて調べた。マイクロトムCASTOR-,POLLUX-RNAi毛状根では、ベクターコントロールと比較して感染4週間後のゴール形成数がそれぞれ72%、43%減少していた。以上の結果から、共生シグナル伝達系抑制系統では、ネコブセンチュウ感染が減少することが示された。また、J4ステージの雌成虫がRNAi系統では見られなかったことから、発達への影響も示唆された。このことは、卵嚢が著しく減少している可能性を示しており、今後確認が必要である。本研究によって、共生シグナル伝達系とネコブセンチュウ感染との関連を示す新たな知見が得られた。今後農業分野での応用が期待される。
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