研究概要 |
嫌気的な条件において、根の通気組織は地上部から根へと酸素を供給し、根の酸素不足を回避することに重要な機能を担っていると考えられている。しかし、好気的な条件における、根の通気組織の生理機能は不明である。そこで、好気的な条件における根の通気組織の生理機能を明らかにすることを目的とした。平成22年度は、好気的な条件で、変異体を土耕法で栽培した。その結果、野生型に比較して、変異体の生育は阻害されていた。以上の結果から、根の通気組織は、嫌気的な条件のみならず、好気的な条件においても、機能していることが示唆された。包括的な植物の通気組織の形成機構の解明に向けて、根の通気組織の形成程度が低下した新奇な突然変異体を単離することを目的とした。平成22年度は、約2,500系統の突然変異集団を栽培し、根の通気組織を観察した。根の観察は、野生型において通気組織が形成される領域、根端から25mmの部位の横断切片を徒手で調製、検鏡した。その結果、根の通気組織の形成が極めて阻害されている系統、部分的に阻害されている系統が単離され、通気組織の形成程度が異なる系統が29系統選抜された。この形質の遺伝的に固定することを目的として、これらの系統を栽培し、自殖種子を得た。得られた自殖種子を栽培し、根の通気組織を観察した。その結果、3系統において、遺伝的に固定していることが確認された。これらの系統については、戻し交配世代促進のために遺伝背景と交配するとともに、雑種集団作製のために交配も行なった。遺伝的に固定されていない26系統については、引き続き栽培し、遺伝的固定を図る。
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