研究概要 |
水田土壌図は作物生産性・生態系サービス・環境持続性を評価するために必須な環境資源インベントリーであり、農業環境分野における重要な知的基盤である。水田土壌図が整備された70年代より土地改良等に伴う乾田化が進み、水田土壌の分類を決定付ける重要な特徴であるグライ層の深度が徐々に低下している。そこで正確な土壌分類を反映した水田土壌図を作成するため、グライ層深度の低下を予測するモデルの開発が急務である。本研究では、地理情報システム(GIS)上で統合した土地改良履歴や土壌特性値をパラメータとして、(1)土地改良に伴うグライ層の深度の変化を予測するモデルの開発、(2)上記予測モデル用いて新たな水田土壌図の作図を試みる。 H22年度は本研究の研究対象地域として福井県全域および茨城県桜川市を選定した。福井県では約8,000地点で土壌断面調査が実施され、それら結果はデータベース化されている。この土壌断面データベースをH22年度に公開した2001年版農耕地土壌図に登録し、グライ層の出現深度の変動と土地改良履歴との関係性を解析した。また、桜川市では航空写真から作成された圃場図と2001年版農耕地土壌図を統合した。桜川市でブロック・ローテーションが行われている地域において、グライ層の出現深度に及ぼす作付履歴の影響を明らかにするため、現地調査によりグライ層の出現深度を測定した。なお、現地調査では詳細な位置情報が取得可能なDGPSを用いて行っているため、今後、グライ層の出現深度の時間変動と地形との関係性が明らかになると期待される。さらに、H22年度にはグライ層の出現深度を予測する際に重要であると考えられる環境因子のうち、土壌温度について空間解像度1kmでデータベースを整備し、「土壌情報閲覧システム」上で公開した。
|