乳酸菌が生産する抗菌ペプチド、バクテリオシンは、天然の安全な抗菌物質として様々な分野での利用が期待されている。これまでに様々なものが見出されてきたが、さらに優れた性質をもつ新奇バクテリオシンが求められている。また、未だ不明な点が多い生産制御機構と作用機構の詳細を明らかにすることで、その分子基盤に基づいた、より効果的な乳酸菌バクテリオシンの利用が可能となる。本研究では、種々の新奇バクテリオシンの構造と生産制御機構、作用機構を解明することを目的とした。 特徴的な構造をもつ新奇バクテリオシンを複数見出すことができた。Leuconostoc paramesenteroides TK41401が生産する新奇環状バクテリオシン、ロイコサイクリシンQ、Weissella hellenica QU 13が生産する新奇リーダーレスバクテリオシン、ワイセリシンYとワイセリシンM、Lactococcus garvieae BCC 43578が生産する新奇クラスIIバクテリオシン、ガルビェシンQなどが見出された。一部の新奇バクテリオシンについては、生合成遺伝子群が明らかとなった。また、ワイセリシンYとMの生産は、培地条件によって、独立に制御されていることが明らかとなった。 前年度までに見いだされた新奇バクテリオシンのうち、Lactococcus lactis QU 5が生産するリーダーレスバクテリオシン、ラクティシンQは、グラム陽性細菌に細菌に選択的に抗菌作用を示すが、その選択性は標的細菌細胞膜の組成によることが示された。Enterococcus faecalis NKR-4-1が生産する新奇2成分ランチビオティック、エンテロシンWは、2つのペプチドが相乗的に抗菌作用を示し、標的菌体の細胞膜に孔を形成して抗菌活性を示すことが明らかとなった。さらに、Enterococcus faecium NKR-5-3が生産するバクテリオシン群の生産は、バクテリオシン様の生産誘導ペプチドによって、転写レベルでの制御を受けていることが明らかとなった。
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