本研究は、遺伝子工学技術(多重変異株作製技術、DNAマイクロアレイ技術や遺伝子改変技術など)を駆使して、大腸菌の水素生成経路および水素生産能を活性化させることによって、水素ガスを高度生産化できる菌株を構築することを研究目的とする。平成22年度では、優秀若手研究者海外派遣制度により米国でも本プロジェクトを実施した。具体的な研究成果は次の通りである。 1.水素生成能の向上化が期待できるnikRおよびiscR変異株に用いた水素発酵を検討したところ、nikR変異株では約3倍、iscR変異株では約2倍の水素ガス生成の向上が見られた。 2.水素ガスが多く発生する条件など、5つの異なったDNAマイクロアレイを行い、識別的遺伝子発現量の解析と水素生産に関わる重要な遺伝子などの解析を行った。その結果、ストレス応答に関わる遺伝子が多く、水素ガスが大量に発生する条件で発現が誘導されていることが明らかとなった。今後、さらなる解析を進める予定である。 3.大腸菌のKEIO変異株ライブラリーの全種類を使い、グルコースまたはギ酸を基質した場合に水素ガスの生成が増加または低減する変異株の探索を行った。その結果、約20変異株が水素ガスの生成向上に寄与していること、約30変異株が水素生成に関与していることが明らかとなった。これらの多くは、機能未知遺伝子として報告されており、今後これらの遺伝子の機能を明らかにする予定である。 これらの3つの研究成果を活用して、今後さらなる水素ガス高度生産菌株の作成を進めていく。
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