研究課題
鹿児島県の福山酢もろみから分離された乳酸菌(Lactobacillus plantarum ML11-11)は、出芽酵母と共培養すると顕著に複合バイオフィルムを形成し、同時にそれらは高い共凝集活性を有していた。そこで本年度の研究においては、共凝集機構の解明を目的に研究を行った。まず、共凝集特性について検討を行ったところ、本共凝集はpH3以下と12以上の環境及びマンノースを添加した環境では抑制され、乳酸菌表層をプロテアーゼで処理した場合も共凝集しなかった。また、乳酸菌細胞を加熱した場合には共凝集は起こらなかった。これらのことから、本乳酸菌と酵母の共凝集は、乳酸菌の表層タンパクと酵母の表層のマンナンを介して行われていることが強く示唆された。次に、両菌液を混合後、凝集沈殿後の上清部分から菌液を採取し、それらを乳酸菌もしくは酵母の選択培地で培養することを繰り返し行った結果、15株の非凝集性乳酸菌自然変異株を得ることが出来た。一方、酵母の変異株は取得できなかった。本乳酸菌非凝集性変異株の複合バイオフィルム形成能は著しく低く、複合バイオフィルム形成には、共凝集が重要な役割を果たしていることが明らかになった。さらに、非凝集性乳酸菌自然変異株の表層タンパクを抽出しSDS-PAGEによりそのプロファイルを比較したところ、非凝集性変異株において発現が著しく減少しているタンパクが見出された。そこで、質量分析法を用いて当該タンパクの同定を行ったころ、表層タンパクであることが強く示唆される結果が得られた。今後、さらに詳細な検討を行いたい。なお、現在乳酸菌のトランスポゾン変異株ライブラリー及び非凝集性変異株を用いたショットガンクローニングライブラリーのスクリーニングは並行して進めている。一方、出芽酵母表層マンナン合成に関する遺伝子の欠損株を用いて検討を行った結果、マンナンの主鎖にマンノースがひとつ付加した構造を乳酸菌表層のタンパクが認識して接着していることが示唆された。
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