研究課題
現在までに、鹿児島福山町で古くから製造されている福山酢もろみから分離した乳酸菌(Lactobacillus plantarum ML11-11(以下ML11-11))と出芽酵母を共培養すると顕著な複合バイオフィルム(以下:BF)を形成し、それはML11-11表層のタンパクと出芽酵母表層のマンナンを介した接着に依存していることが明らかになった。そこで、本年度の研究においては、共凝集に必要な乳酸菌と酵母の表層因子を明らかにするとともに、複合BFを固定化菌体として用いる複合BFリアクタ」の試作と発酵試験を行う。まず、共凝集に必要な乳酸菌の表層因子に関しては、約8,500株より成るML11-11のトランスポゾン変異株ライブラリーを構築することができた。現在、千株程度スクリーニングを行ったが、有意に共凝集活性を失ったものは得られていない。また、ML11-11ショットガンクローンライブラリースクリーニングに関しては、ゲノムDNAの安定抽出を行うことができるようになり、現在ライブラリー作製を進めている。共に、今後さらに検討を継続したい。ところで、ML11-11表層タンパクのプロテオーム解析の結果、共凝集に関わると推定される表層タンパク質は、菌体外の多糖分解酵素と一致する部分ペプチド配列を有することが明らかとなった。今後、変異株等のスクリーニングは継続して行うものの、並行して当該部分ペプチド配列を有するタンパク質の遺伝子のクローニングを行いたい。一方、共凝集に必要な出芽酵母表層マンナンに関しては、マンナンの主鎖にマンノースがひとつ付加した構造を乳酸菌表層のタンパクが認識して接着していることが示唆されていたが、その後当該遺伝子(mnn2)相補実験を行った結果、共凝集現象が再現された。さらに、これまでに複合BFを固定化菌体として用いる複合BFリアクターの試作と発酵試験を行うことができた。加えて、抗菌物質生産乳酸菌を用いることにより高い雑菌耐性を付与することができ、「低殺菌自律複製型固定化BFリアクター」の作製につながる基礎的知見を得ることができたものと考えている。
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