我々は酵素の活性スクリーニング法、PIGEX(Product Induced Gene Expression)法を考案し、その有効性を報告している。当該法は、特定の化合物をマーカー遺伝子の発現で検知可能な微生物センサーを用いて、ライブラリーから陽性クローンをスクリーニングする方法である。我々は今回の研究提案にてPIGEX法に、ゲルマイクロドロップ法とフローサイトメーターによるソーティングを組み合わせることによって当該法の高速化を試みている。 平成22年度において、我々はモデル系としてセンサーとして安息香酸に反応し緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するクローンと、陽性クローンとして安息香酸アミドを安息香酸に変換するクローンを用意した。これらを安息香酸アミドとアガロースを含む培地中に混合し、混合液を多孔質ガラス膜に通してWater/Oilエマルジョン化させ、センサーと陽性クローンを同時に封入したゲルマイクロドロップを作成した。その後ゲルマイクロドロップ内で細胞を培養し、フローサイトメーターによってGFPの蛍光が認められたゲルマイクロドロップを回収した。これを蛍光顕微鏡を用いて観察すると、陽性クローンの変換活性により生じた安息香酸を、センサーが検知しGFPを発現していることが確認できた。一方でゲルマイクロドロップ内で増殖させたクローンは、非常に生存率が低いことが明らかとなった。そこでゲルマイクロドロップをアガラーゼにより消化し、閉じ込められていたクローンを外に取り出してやることにより、生存率を高めることに成功した。以上の結果から、ゲルマイクロドロップとフローサイトメーターによりPIGEX法の高速化が期待できることが明らかとなった。
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