研究概要 |
小胞体に局在し新生タンパク質の品質管理に重要なグルコシダーゼII,ならびにその類縁酵素の機能と構造の相関関係を明らかとすることを目的として研究を行った. 1.小胞体グルコシダーゼ モデル生物のひとつである分裂酵母Schizosaccharomyces pombeより同酵素の触媒サブユニットであるグルコシダーゼII α-サブユニットの遺伝子をPCRにより取得しクローニングした.本遺伝子を大腸菌発現用プラスミドベクターであるpET23dにサブクローニングし,大腸菌での組み換え酵素の生産を試みた.一般的なプロトコールでは組換えタンパク質は不溶性画分として生産された.そこで組み換え酵素生産条件の検討を行った.その結果,発現誘導物質であるIPTGを加えず,また低温度で培養することで可溶性画分に組み換え酵素を生産できた.組み換え酵素をNi-アフィニティークロマトグラフィーにより精製した.組み換え酵素はこれまで知られている類縁α-グルコシダーゼと異なり,合成基質であるp-nitrophenyl α-D-glucopyranosideを比較的よい基質と出来ることを明らかとした.また組み換え酵素は中性付近で最大反応速度を示すことを明らかとした.しかし,精製した組み換え酵素は不安定であり,安定なタンパク質を得るためにはヘテロダイマーを形成するβ-サブユニットが必要であることが示唆された.そこでβ-サブユニットとの共発現を行うために,β-サブユニットのcDNAを3'RACEと5'RACE法により取得した. 2.類縁酵素の異種宿主生産と機能解析 グルコシダーゼIIとアミノ酸配列類似性を示すタンパク質をコードする遺伝子を細菌よりクローニングし,大腸菌において,このタンパク質の生産を試みた.定法に従いタンパク質の生産し,Ni-アフィニティークロマトグラフィーにより精製した.このタンパク質はグルコシダーゼIIと明らかな配列類似性を示すにもかかわらず,α-グルコシダーゼ活性を有しておらず,新たな機能を有することが示唆された.
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