研究概要 |
本研究は、神経幹細胞(NPC)におけるメカニカルストレスを生理応答レベル、細胞内シグナル伝達レベルで解明することで、生理的に生じうる脳神経系でのストレス応答を理解することを目的としている。 本年度は、メカニカルストレスを測定するための諸条件の設定を行うことを最優先事項とした。本年度より、勤務地が変更となったことをうけ、まず、野生型胎児脳海馬より神経幹細胞/前駆細胞の単離・培養方法を確立、その後、メカニカルストレス応答を解明するための様々な実験系の確立を行った。研究実施計画に基づき、NPCの増殖測定のためのBrdU法、アポトーシス評価のためのTUNEL法、サイトカイン類を測定するためのELISA法、細胞内シグナル伝達解析法を構築した。以上の研究系構築のためにメカニカルストレスの代替刺激として酸化ストレスを付与していたが、その中で酸化ストレス依存的に成長因子プログラニュリンの発現・分泌が上昇することが見出された。そこで、研究系構築の過程の一部として成長因子プログラニュリンをポジティブコントロールとして用いたところ、プログラニュリンの新規生理作用ならびにシグナル伝達機構を発見し、学術論文として投稿した(根建ら、2010.Nedachi et-al., 2011, In press)。メカニカルストレス刺激装置については、詳細な伸展刺激が可能である機器を設計・発注したものの,細胞接着性ならびに温度上昇などの問題がなかなか解決されずに時間がかかってしまったが、23年度春に完成見込みであるとの連絡を受けている。本年度構築した研究系を駆使することで研究実施計画に従ったメカニカルストレス依存的な生理応答とその発現メカニズムが明らかになることが期待される。
|