研究概要 |
本研究は、神経幹細胞/前駆細胞(Neural Progenitor Cells ; NPC)におけるメカニカルストレスを生理応答レベル、細胞内シグナルレベルで解明し、脳神経系での物理的ストレスに対する細胞応答を理解することを目的として研究を行った。昨年度は、研究実施計画に基づいたメカニカルストレスを測定するための諸条件の設定を行うことを最優先課題とし、細胞増殖・分化・細胞死を測定しうる実験系の確率に成功した。 本年度は、NPCにおけるストレス応答性の生理現象として、成長因子プログラニュリン(PGRN)が発現上昇することを初めて見いだしたため、その機構解析を行う前提でNPCにおけるPGRNの作用を明らかにし、論文2報として発表した(Nedachi et al., Neuroscience, Nedachi et al., Cognition and Dementia)。このストレス応答性のPGRN分泌はNPCのみならず初代培養大脳皮質ニューロン等においても観察されたことより、ユビキタスな生理現象であることが示唆された。現在、このストレス依存的なPGRN産生上昇機構をさらに詳細に解析、平成24年度に米国神経科学会で発表予定である。昨年度よりNPCに対して伸展ストレスを与えうる伸展刺激装置作製を行ってきたが、機械モータ部における発熱問題が解決せず、生理現象を観察する装置として不適であると考えられた。そのため、本年度は並行してカーボンナノチューブをはじめとするナノ素材添加による物理学的ストレスを神経幹細胞に付与し、生理作用を明らかにするための研究を行った。その結果、NPCからのアストロサイト分化誘導が促進される、また神経突起伸長が促進されるとの予備的な知見を得た。従って、神経幹細胞/前駆細胞における物理的ストレス付与は少なくともNPCの分化過程に影響を与えることが明らかとなった。以上の結果も平成24年度中に国内学会あるいは国際学会で発表予定である。
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