植物は病原体に対する誘導抵抗性として、病原体由来の分子(エリシター)を認識し、過敏感反応(HR)を引き起こす。本研究ではHR誘導への関与が報告されているCysteine-rich receptor-like kinase(CRK)の病原菌認識機構の解明を目指した。 本年度は真菌感染を認識する受容体候補の1つであるCRK2の細胞外領域のC末端ドメイン(CRK2-ECD2)について、結晶を得て、大型放射光施設Photon Factory BL17AでX線回折データの収集を行い、イチョウ種子由来抗真菌タンパク質Gnk2の結晶構造をモデルとした分子置換法により位相を決定し、分解能2.79Aで立体構造を決定した。CRK2-ECD2は5本のβストランドからなる一枚の逆並行βシートと2本のαヘリックスからなる構造を形成していた。また、CRKに共通に保存されているC-X_8-C-X_2-Cモチーフはジスルフィド結合を形成し、本タンパク質の安定化に寄与していることが分かった。この結果から、H22年度に酵母Saccharomyces serevisiaeの破砕物と相互作用すると同定された部位は、CRK2 ECD2の逆平行βシートを構成する4番目と5番目のβストランドとそれをつなぐループ部分であることが判明し、この領域がエリシター(生体防御反応を誘導する物質)認識部位となる可能性が示唆された。一方、CRK5とCRK13を過剰発現させた植物では、病原性細菌Pseudomonas syringaeの感染および細菌の鞭毛タンパク質フラジェリン由来ペプチドfig22によりHR誘導が促進されることが知られている。そこで、GSTプルダウンアッセイによりCRK5あるいはCRK13の細胞外領域ドメインとfig22の相互作用解析を行ったところ、どちらも相互作用は認められなかった。
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