本年度はアルカリホスファターゼ(ALP)固定化CNT/ペプチド複合体の機能評価を中心に研究を進めた。 まず、ミカエリスーメンテンプロットにより固定化ALPおよび遊離ALPの触媒活性を評価した。固定化ALPのV_<max>とK_mは酵素濃度が25 pg/mlの時にそれぞれ19.5 nM/s、2.21 mMとなり、遊離ALPの19.4 nM/s、1.47 mMと比べてK_mは増加したがV_<max>に差は無かった。昨年度は固定化により活性低下が起こるという結果を得ていたが、これは低基質濃度条件下で評価したためであると考えられた。これらの速度パラメーターを熱力学的に解析したところ、測定したすべての温度で固定化ALPと遊離ALPのV_<max>はよく一致し、アレニウスプロットから見積もられる活性化エネルギーもそれぞれ16.5 kJ/molおよび17.9 kJ/molとよく一致した。一方、K_mのファントホッフプロットから得られる熱力学パラメーターは、ΔH^oが19.9 kJ/molおよび13.8 kJ/mol、ΔS^oが95.5 kJ・K^<-1>・mol^<-1>および12 kJ・K^<-1>・mol^<-1>となり、K_mの増大は基質結合に伴うΔS^oが減少したためと考えられた。 酵素の熱安定性について検討した結果、30分間の熱処理により活性が50%となる温度T_<50>は、固定化ALPが49℃、遊離ALPが44℃となり、固定化により5℃上昇した。熱力学的に解析した結果、失活のΔH^‡が152 kJ/molおよび85.0 kJ/mol、ΔS^‡が129 kJ・K^<-1>・mol^<-1>および-75.4 kJ・K^<-1>・mol^<-1>となり、固定化に伴う熱安定性向上は主にΔH^‡の増加によってもたらされることが確認された。 このようにCNT/ペプチド複合体に酵素を固定化することにより、最大活性はそのままに熱安定性を向上させることに成功し、複合体化による酵素の機能改善が可能であることを証明した。
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