本年度は、環境中の微生物に対する磁場の影響に焦点を当てた。従って、環境土壌中の微生物に外部から磁場を与え、その影響が示唆される菌株数種をスクリーニングし、それらの菌の磁場印加による代謝変化を個々に調べた。増殖の促進・抑制、二次代謝の促進・抑制、死滅促進・抑制等、様々な影響が予測されるが、影響を受ける菌とその影響を明らかにすることを目的とした。 大学敷地内から採取した土壌を様々な液体培地に数グラム添加し、25℃で振盪培養を行った。その際、永久磁石(0.3テスラ程度)を培養フラスコ底面と周辺部に設置した(集積培養)。数日間培養した後、平板培地でコロニー形成を観察した。磁場印加有りの培養と印加無しの培養とを比較し、コロニー数や形態等を観察して磁場による影響が示唆される菌株数種を選別した。集積培養で単離した菌株を数種の培地を用いて磁場印加有り無しでそれぞれ純粋培養し、濁度を測定することにより菌の増殖変化を比較した。磁場印可をせずに培養したコントロール群と比較して、培養初期に濁度の上昇、あるいは減少傾向が見られた株や、培養後期に濁度の上昇、あるいは減少傾向が見られた株など、いくつかの菌株で再現性のある培養結果が得られた。これらの菌株においては、磁場印加の影響が現れた時点での培養菌体を回収し、細胞内タンパク質あるいは分泌タンパク質を調べることで代謝の変化を比較するためSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。電気泳動の結果、差異が示唆されたサンプルに関しては、さらに詳細な比較を行うため、二次元電気泳動に供した。画像解析により有為差を得るとともに、明確な差異が確認されたタンパク質を同定中である。
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