研究課題
現在、新型インフルエンザウイルスの感染拡大が世界中で危惧される中、パンデミックがいつ発生してもおかしくない状況にあり、早期のインフルエンザ予防および治療薬の開発が切望されている。このインフルエンザウイルス感染にはウイルス表面上のヘマグルチニンというスパイク状のタンパク質が関与しており、これが宿主細胞表面上の糖鎖を特異的に認識することで感染が成立する。近年申請者は、天然素材である納豆菌生産γ-ポリグルタミン酸にヘマグルチニンが特異的に認識する糖鎖を高密度に配位させることで、人工糖鎖高分子型のインフルエンザウイルスブロッカーの開発に成功している。本プロジェクトでは、インフルエンザウイルスブロッカーの機能設計を行い、より強力かつ実践的な感染阻止剤の開発を目的とする。本年度は初めに、我々が発現系を確立したカイコ幼虫発現組換えトリ型インフルエンザウイルス受容体合成酵素(α2,3-シアリルトランスフェラーゼ)の精製を硫安分画・Anti-FLAG M2アフィニティーカラムを用いて行った。本精製酵素を利用することで、非常に高収率(85%以上)でトリ型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンが認識する糖鎖ユニット(Neu5Acα2,3LacNAc- or Lac- R)を合成する事に成功した。さらに、以前発現系を構築したカイコ幼虫発現α2,6-シアリルトランスフェラーゼも利用する事により、種々の骨格構造[金属キレート分子(EGTA)・多糖ポリマー(分岐グルカン)・ポリペプチド]にトリ型インフルエンザウイルス認識糖鎖(シアロ3糖)やヒト型インフルエンザウイルス認識糖鎖(シアロ5および7糖)を多価に配位したインフルエンザウイルスブロッカーを合成した。また、インフルエンザウイルスに対する感染阻害試験および赤血球凝集阻害試験より、これら新規インフルエンザウイルスブロッカーが構造特異的にインフルエンザウイルスと結合し、さらには感染を阻害する事を実証した。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Bioconjugate Chem.
巻: 23 ページ: 97-105
10.1021/bc200440e
J.Biosci.Bioeng.
巻: (in press)
10.1016/j.jbiosc.2012.01.010
Sensor.Mater.
巻: 23 ページ: 135-146
http://wvvw.agr.shizuoka.ac.jp/c/biochem/index.html