研究概要 |
本研究では、生理活性の詳細が明らかにされていない植物由来希少天然有機化合物ソラノエクレピンAに着目して、構造と活性発現の関係を明らかにするための合成的基盤を形成することを目指した。 ソラノエクレピンAは、三員環から七員環までの全ての炭素環から構成された非常に特異な化学構造を有している。特に、右側部分はシクロブタンを含むトリシクロ[5.2.1.0^<1.6>]デカン構造からなり、生理活性発現に必須であると考えられている。しかし、トリシクロ[5.2.1/0^<1,6>]デカンは連続する不斉四級炭素を含み高度に歪んだシクロブタンから構成されるため、その効率的な合成法の確立が最も重要な課題となる。 平成23年度は、困難が予想されるがなるべく短工程で合成できるシクロブタン合成法を立案し研究を行った。具体的には、分子内[2+2]付加環化反応により、ソラノエクレピンA右側部分に該当する四員環の合成を検討した。Mukaiyama試薬でカルボン酸を活性化させた後加熱を行ったところ、予期した通りケテンは生成し、興味深いことに得られた生成物は望む熱的[2+2]付加環化によるトリシクロデカンではなく、二環性化合物およびスピロ化合物が得られた。左側セグメントの合成では、D-パントラクトンの立体選択的なプロパルギル化とWittig反応によって不飽和エステルとした後、ラジカル環化反応とヨードエーテル化を経ることによって、オキサビシクロ骨格の構築に成功した。
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