研究概要 |
(Z,Z)-6,9-ヘプタデカジエンを主要成分として分泌するCarpoglyphus lactis(サトウダニ)を用いて,同位体標識したグルコース-1-^<13>Cの取り込み実験を行った.開始時から経時的に分泌化合物のGC/MS分析を行い,分泌化合物のマススペクトルからラベル体の取り込み量を測定した.十分な取り込みを確認したところで,ダニの脂質を溶媒抽出し,加水分解とエステル化反応を行って脂肪酸エステルに誘導した.カラムクロマトグラフィーによりリノール酸エステルを単離精製し,^<13>C-NMRスペクトルを測定した.現在,市販のリノール酸エステルのスペクトルデータと比較し,同位体標識された炭素原子を帰属している.この実験でサトウダニによるリノール酸の生合成を証明する. ユリ根から得られたゴミコナダニの一種Sancassania mycophagaのヘキサン抽出物を,GC-MSで分析したところ,高級脂肪酸エステル3成分を認めた.炭素数22の不飽和脂肪酸と炭素数5の飽和・不飽和アルコールのエステルであるドコセン酸ペンチル,ドコセン酸ペンテニル,ドコサジエン酸ペンチルと推定した.そこでこれら脂肪酸エステルの構造決定を行った.マススペクトルの開裂様式から,モノエン脂肪酸エステルは2成分であり,ともに二重結合位置を13位と決定した.エルカ酸とイソペンチルアルコールからエステルを合成したところ,天然物と保持時間およびマススペクトルが一致した.幾何構造を決定するため,エルカ酸イソペンチルをE体に異性化したところ,天然物のGC保持時間と異なった.その結果,このモノエン脂肪酸エステルを新規化合物である(Z)-13-ドコセン酸イソペンチルと同定した.現在,残る2成分の構造決定を進めている.
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