研究概要 |
Pradimicin A(PRM-A)は,Ca^<2+>イオン存在下D-マンノシド(Man)と特異的に結合する抗生物質である.PRM-Aとその類縁体は,糖を認識する唯一の非ペプチド性天然物であることから,そのMan認識機構に興味が持たれている.しかしながら,PRM-Aが高い凝集性を示すために,その解析研究はほとんど進んでいなかった.本研究では,構造解析に不利なPRM-Aの凝集性を逆に利用するという新しい切り口を設定し,固相中でPRM-AとManとの相互作用解析を試みることとした. Ca^<2+>イオンのサロゲートとして^<113>Cd^<2+>イオンを用いてPRM-A/Man凝集体を調製し,その固体^<113>Cd-NMR解析を行なった結果,PRM-AがCa^<2+>イオンを介してManと結合していることを強く示唆する知見を初めて得るに至った.さらに,PRM-A産生菌の生合成反応を利用してPRM-Aを^<13>C標識し,その凝集体の固体二次元Dipolar Assisted Rotational Resonance (DARR)解析を行なった結果,PRM-AにおけるMan結合部位を初めて特定することができた.以上の研究成果は,固体NMRでレセプター内のリガンド結合部位を特定した極めて稀な例であるとともに,「非ペプチド性天然物による糖の認識」の全容を解明するための糸口となるものである.
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