<脂肪組織の免疫環境の悪化を抑制する食品成分のin vivoにおける機能性評価> これまでの研究において我々は、肥大化した脂肪組織に浸潤しているマスト細胞の病態生理学的意義を明らかにするとともに、マスト細胞およびT細胞の誘引を阻害する食品成分を探索するためのin vitroスクリーニング系の構築に成功してきた。また、このスクリーニング系を用いて有効性を発揮する食品成分を探索したところ、カロテノイドの一種であるカンタキサンチンおよびアスタキサンチンが見出された。 そこで本年度の研究では、カンタキサンチンおよびアスタキサンチンのin vivoにおける有効性を評価するため、肥満・糖尿病モデルマウスを用いて実験を行った。C57BL/6Jマウスに60%kcal高脂肪食を4ヶ月間給与し肥満を誘導するとともに0.05および0.1%のカンタキサンチンを摂取させたところ、体重や組織重量に変化は認められなかったが、TNF-α等の血中の炎症性マーカーの低下、および経口糖負荷試験において血糖値の有意な低下が認められた。またアスタキサンチンも、卵巣摘出による肥満・糖尿病モデルマウスにおいて糖・脂質代謝異常の改善作用が認められた。 そこで次に、カンタキサンチンによる免疫環境および糖代謝改善のメカニズムについて検討するため、CV-1細胞を用いたPPARγレポーターアッセイ系および3T3-L1細胞を用いて、カンタキサンチンが脂肪細胞分化に及ぼす影響を検討した。その結果、カンタキサンチンはPPARγ活性には影響を及ぼさなかったが、脂肪細胞分化を顕著に抑制した。 以上のことより、カンタキサンチンは脂肪細胞分化の抑制を介して高脂肪食誘導性の糖代謝異常および免疫環境の悪化を改善する可能性が示唆された。
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