研究概要 |
抗くる病因子として発見されたビタミンDは古くから骨増強作用を持つことが知られているが、そのメカニズムは小腸や腎臓におけるカルシウム代謝調節作用によるものであると考えられており、骨組織におけるビタミンDの生理作用は明らかになっていない。ビタミンDの生理作用はリガンドである1α,25(OH)_2D_3がビタミンD受容体(VDR)に結合し、標的遺伝子の転写制御を行うことにより発揮される。そこで本研究では骨芽細胞特異的VDRKOマウスやリガンド結合能のないVDRノックインマウスの解析を行うことにより、小腸や腎臓におけるカルシウム代謝調節を無視できる系において、骨組織におけるリガンド結合状態およびリガンド非結合状態のVDRの機能を明らかにし、ビタミンDによる骨増強の分子機構の解明をめざす。 昨年までに骨芽細胞特異的VDRKOマウスの表現型の解析をおこなった結果、骨芽細胞特異的VDRKOマウスは対照群と比較し、骨量および骨密度の増加が認められ、骨芽細胞のVDRは骨量を負に調節する事が示唆された。骨芽細胞特異的VDRKOマウスでは骨芽細胞のVDRは野生型に比べ半分程度の欠損となるため、本年度は全身的なVDRKOヘテロマウスでも骨量増加が認められるか検討した。その結果全身的ヘテロマウスでもカルシウム代謝には異常は見られず、骨量増加が認められるものの、その程度は骨芽細胞特異的VDRKOマウスの場合と比較すると僅かであった。よって骨組織には骨芽細胞のVDRの機能とは相反する、つまり骨量を正に調節する機能を持つVDRが存在する事が示唆された。またリガンド結合能のないVDRノックインマウスはVDRKOマウスと異なり高カルシウム食で飼育しても、カルシウム代謝異常や骨形成不全が改善されなかった。よってリガンドの結合していないVDRはカルシウム代謝、骨代謝に対して悪影響をおよぼすことが示唆された。
|