研究課題
昨年度までの研究において、脂肪細胞へのロイシン添加がインスリン非依存的な糖取込みを抑制することで、中性脂肪蓄積を抑制することを見出した。このような作用は他の分岐鎖アミノ酸には認められなかった。平成23年度も引き続き、ロイシンが脂肪細胞機能に与える影響について検討を行なった。ロイシンによる糖取込み抑制作用がインスリン非存在下でのみ観察されたことから、インスリンシグナル経路とロイシン作用について検討したところ、ロイシンの糖取込み抑制作用は、PKC阻害剤の影響は受けず、PI3K阻害剤の存在下では消失することが明らかとなった。このことから、インスリン非存在下におけるロイシンの糖取込み抑制作用には、PI3Kが関与することが示唆された。また、ロイシンが脂肪細胞における脂質取込みに与える影響について検討したところ、ロイシン添加はインスリン存在下でのみ脂肪酸の取込み量を増加させることが明らかとなった。この時、脂質取込み、輸送に関与する遺伝子(LPL,aP2)の発現量の増加が認められた。一方、他の分岐鎖アミノ酸においてはこのような効果は認められなかった。ロイシンによる脂質取込み・輸送に関わる遺伝子の発現亢進は、PI3K阻害剤の影響は受けなかったが、PKC阻害剤存在下で消失し、PKCを介した現象であることが示唆された。以上より、脂肪細胞に対するロイシンの作用はインスリンやエネルギー基質によって変化することが示唆された。また、肥満モデル動物を用いた検討において、2%ロイシン摂取群では耐糖能、空腹時血糖の改善が認められた。これらの結果から、ロイシンは生体の栄養状態に応じ、生体の代謝調節作用を担いうることが示唆された。またその作用には、脂肪細胞機能制御を介した機構が存在する可能性があると考えられた。
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