研究概要 |
本研究では、神経成長因子(Nerve growth factor, NGF)とその受容体TrkAを介した神経分化シグナル伝達の制御機構の解明と、それを制御しうる低分子化合物の探索を目的としている。これまでに、アラキドン酸代謝産物のひとつである15d-PGJ_2がNGFによる神経細胞分化誘導を促進するということが明らかになっていることから、本年度は、15d-PGJ_2の作用機構の解明するために、ラット副腎髄質褐色細胞腫であるPC12細胞をNGF依存的な神経分化のモデルとして検討を行った。 PC12細胞に低濃度NGFとともに15d-PGJ_2を投与することにより、15d-PGJ_2濃度依存的に神経突起が伸長し、分化が促進されていることを確認した。またこの神経突起伸長は、細胞内カルシウムイオンのキレート剤であるBAPTA-AMの前投与や、EDTAによる細胞外カルシウムイオンのキレートにより、有意に抑制されることから、15d-PGJ_2によるPC12細胞の分化促進には細胞外からのカルシウムイオンの流入が重要である可能性が示唆された。また、カルシウムイオンに対する蛍光プローブを用いることにより、細胞内カルシウムイオン濃度の変化を測定したところ、NGFと15d-PGJ_2を同時に投与することにより、細胞内カルシウムイオン濃度の有意な上昇が認められた。今後、15d-PGJ_2による細胞内カルシウム濃度上昇に関与するイオンチャネルの同定と、その活性化機構の解明を行う予定である。
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