腸内細菌によるポリフェノール代謝変換物の生理機能性及び体内動態に関する知見を得るため、本年度は、ポリフェノール/腸内細菌培養液の機能性を評価した。フラボノールに属するガランジン、ケンフェロール、ケルセチン、ミリセチンおよびフィセチンを用い、それぞれ10種の腸内細菌(常在菌4種、ビフィズス菌3種および乳酸菌3種;理研BRCより譲渡)と3時間培養した。その培養上清について、マウスマクロファージ由来RAW264細胞のNO産生能を指標として抗炎症作用を評価した。その結果、フラボノールとビフィズス菌1種の培養上清において、フラボノール単独の場合よりも強い抗炎症活性が認められた。これは、培養時間(1-6時間)に依存して活性が上昇したことから、フラボノールがビフィズス菌によってより高活性の物質に代謝されている可能性が示唆された。また、マウス肝臓由来hepalclc7細胞のNQO1活性を指標として解毒酵素誘導作用を評価したところ、同様に、常在菌1種および乳酸菌2種において活性の上昇が見られた。これらの結果から、腸内細菌、特にビフィズス菌や乳酸菌などの有用菌はポリフェノールの生理機能性に対して何らかの増強作用を有していることが初めて明らかとなり、学術(新知見)および産業(新シーズ)の両分野において非常に興味深い結果であると言える。
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