研究課題/領域番号 |
22780120
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
川畑 球一 福井県立大学, 生物資源学部, 助教 (60452645)
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キーワード | 腸内細菌 / ポリフェノール / 代謝 / 生理機能性 |
研究概要 |
昨年度、フラボノールの抗炎症活性が、それ単独の場合と比べて腸内細菌(Bifidobacterium adolescentis,BA)と培養した場合の方が高活性を示すことを見出したことから、今年度はその活性成分の単離・同定を試みた。まず、フラボノール/BA培養上清の抗炎症活性とBAの細胞機能の関連性について検討するため、熱処理殺菌したBAを用いて培養上清を調製したところ、抗炎症活性は見られなかったことから、BAがフラボノールをより高活性の成分に代謝、もしくは、フラボノール刺激に応答してBAが何らかの成分を産生している可能性が考えられた。そこで次に、前者に注目して、すでに報告されているC環開裂型のフラボノール代謝物についてその標品を購入し、抗炎症活性を評価した。A環とB環に相当する代謝物を単独で処理した場合、抗炎症活性は見られず、組み合わせた場合に若干の活性が認められたが、培養上清と比較して非常に弱かったことから、C環開裂型代謝物は培養上清中の活性成分である可能性は低いことが明らかとなった。続いて、活性成分の同定を目指し、SepPackカラムによる活性成分の固相抽出を試みたが、抽出物について活性をトレースできなかった。そこで、フラボノール単独およびフラボノール/BA培養上清を酢酸エチル分配し、水層と酢酸エチル層について活性を評価したところ、単培養の場合は酢酸エチル層でのみ、共培養の場合は水層と酢酸エチル層の両方で活性が確認できた。HPLC-PDA分析の結果、酢酸エチル層の主成分はフラボノールそのもの(単培養と共培養でピーク面積に大きな差異なし)であり、また、水層でも特徴的なピークを検出できなかったことから、当該成分は(通常のHPLC条件では分離困難な)高極性成分であり、フラボノール代謝物ではなくBA由来産物(ペプチドなど)である可能性も考えられた。これらの結果は、フラボノールと腸内細菌の機能的相互作用を初めて示唆したものであり、それらの機能性研究を発展させる重要な知見であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、マウスにおける活性成分の体内動態についても検討する予定だったが、活性成分を同定することが困難であったため、実施に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の平成24年度砺究計画は、マウスにおける活性成分の体内動態に関する検討および病態モデルマウスでの有効性検証であるが、活性成分が未知であるため体内動態の検討は一時保留とする。一方ご病態モデルマウスでの有効性検証は、培養上清を用いて行うことが可能であり、活性成分の同定と同時にこれを進めて行く予定である。また、活性成分の同定は、LC/MSの利用を計画している。現時点では、研究計画の遂行に支障を来すような大きな問題は無い。
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