研究概要 |
昨年度の検討から、フラボノールとビフィズス菌(Bifidobacterium adolescentis, BA)の共培養上清における抗炎症活性成分は高極性物質であることが明かとなっていた。本年度はまず、活性成分がフラボノール代謝物であると予想し、培養上清中のフラボノール残存率を解析した。フラボノール残存率は培養時間の経過に伴って減少し、その推移はBAの有無に依存しなかったことから、BAはフラボノールを積極的に代謝しないことが示唆された。また、フラボノール濃度を変えて共培養実験を行ったところ、単独では抗炎症活性を示さない低濃度のフラボノールにおいてもBAとの共培養で強い活性が認められた。これらの結果から、活性成分はBA由来である可能性が強く示唆された。そこで次に、BA菌体数を2~4倍に増やしたところ、菌体数に依存して共培養上清の抗炎症活性は上昇し、さらに興味深いことに、菌体数を4倍とした場合の単培養上清でも共培養時と同程度の活性が発現した。これらの結果から、BAは本来、わずかながら抗炎症活性成分を分泌しており、フラボノールはその分泌もしくは生産を増強することが明らかとなった。また、活性成分の性状を分析したところ、耐熱性を有する分子量3000以下の成分であることが確認でき、培養上清中のペプチドを含有すると思われるアセトン沈殿物に活性は認められなかったことから、ペプチド以外の物質であることが示唆された。 フラボノールがビフィズス菌の活性を増強する、いわゆるプレバイオティクス様作用は本研究が初めて明らかにしたものであり、すでに蓄積している食品機能性の知見について、新展開や再考を促すと期待させるものである。また本研究は、これまで未解明であったプロバイオティクスの機能性成分についても重要な知見を与えており、当該分野の発展にも大きく寄与すると考えられる。
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