研究課題
フラボノイド類の化学構造の違いは、抗酸化作用をはじめとする様々な生理機能の活性強度に影響するが、その作用機序に関する知見は少ない。近年、生理機能の作用機序において生体内の蛋白質との相互作用が影響し、結合様式やそれに起因する結合親和性の強弱が重要な因子となることが明らかになった。本研究では、フラボノイド類と蛋白質との相互作用を詳細に解析し、結合構造や親和性の強弱を明らかにすることで、フラボノイド類の示す多彩な生理作用の作用機序の解明を目的とした。前年度に引き続き、カテキン類とヒト血清アルブミンとの相互作用を解析するとともに、カテキン類が2分子重合した化合物であるテアフラビン類とヒト血清アルブミンとの相互作用も解析した。等温滴定型カロリメトリによる解析の結果、ガロイル基の有無や水酸基の数が血清アルブミンとの親和性に強く影響し、ガロイル基を2つ持ち水酸基の数も多いテアフラビンジガレートがカテキン類や他のテアフラビン類よりもヒト血清アルブミンに対する結合定数が高いことが明らかになった。また、カテキン類はヒト血清アルブミンの存在下で酸化に対する安定性が向上するが、テアフラビン類はヒト血清アルブミンの存在下で酸化に対する安定性が減少することが明らかになった。安定性の低下にはチオール基が関与することから、テアフラビン類はヒト血清アルブミンのチオール基と化学反応を起こすことが予想される。プロテオミクスにより血清および細胞中の標的分子を探索した。カテキン結合ビーズを作成し、血清中の標的分子を探索した結果、ヒト血清アルブミンよりも結合親和性の高く、血中輸送に関与する可能性がある蛋白質としてトランスサイレチンを見出した。また、ホウ酸結合ビーズを用いて培養細胞中の標的分子を探索した結果、カテキン類と共有結合することでガン細胞の増殖抑制に関与するタンパク質としてp68を見出した。
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Free Radical Biology and Medicine
巻: 50 ページ: 1324-1335
10.1016/j.freeradbiomed.2011.01.024
http://sfns.u-shizuoka-ken.ac.jp/foodbioc/index.html