FABPは小型の細胞内タンパク質で細胞内において脂溶性物質の輸送に関与している。本研究では生活習慣病の病態発症におけるFABP3の役割と関連分子の探索を目標としている。本年度は平成22年度の実験成果、23年度の研究計画に従い実験を行った。 FABP3と相互作用するタンパク質を得るために、22年度にGST-FABP3融合タンパク質、及び抗FABP3抗体を用いた解析を行ったが、相互作用分子の特定には至らなかった。そこで、Halo-Tagを用いた実験系を構築した。Halo-tag融合FABP3遺伝子を作製し、これをレトロウイルスに組み込みC2C12細胞に感染させることで、Halo-Tag融合FABP3安定発現C2C12細胞を作製した。本細胞を用いてpull down assayを行ったところ、FABP3特異的なバンドを数本得ることができた。これらをLC-MS/MSを用いて解析することで、いくつかの分子を同定することができた。現在、これらの分子とFABP3の相互作用の生理的意義を検討している。また、本細胞を用いて、FABP3の局在性について検討した。パルミチン酸やレチノイン酸、あるいはPPARα、δのアゴニストの添加により、FABP3は細胞質から核へと移行したが、インスリンやPPARγのアゴニストではFABP3の核移行は見られなかった。このことからFABP3はリガンド特異的な核移行を行っており、細胞応答に重要な役割を果たしていることが示唆された。 22年度に作出した骨格筋特異的FABP3過剰発現トランスジェニックマウス(Tgマウス)のエネルギー代謝について検討した。通常飼育条件下においては、Tgマウスと野生型マウスとの間でエネルギー代謝に差は見られなかった。今後、本マウスを用いた様々な解析から生活習慣病の病態発症におけるFABP3の役割が明らかになると期待される。
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