外生菌根は樹木を宿主とする共生系である。樹木の成長に必要な養分の大部分は菌根菌から供給されるため、菌根菌が共生しない樹木は成長できない。これまでの研究から、樹木と菌根菌の相互作用の中には、菌根圏バクテリアが関与していることが示されているが、その森林生態系における実態については未知の部分が殆どである。本研究課題では、外生菌根圏バクテリアの基礎的知見を集積することで、植生遷移に伴う樹木-菌根菌-バクテリアの三者共生の相互作用機構について新たなモデルを提言することを目的とする。本年度は以下の項目について研究を実施した。 1.森林における外生菌根圏バクテリアの群集構造富士山火山荒原においてミヤマヤナギ菌根圏を含んだ土壌サンプルを採取し、DNAを抽出した。新規に開発したバクテリア特異的プライマーを用いた16S rDNA領域をシークエンスし種を推定した。300近いシークエンスのうち90%近くがProteobacteria門に属していた。菌根圏では培養困難なバクテリアは優占していない可能性が高い。一方、非培養法では検出できなかった種が培養法ではわずかに検出されたことから、解析手法によってバクテリア群集構造の結果にはバイアスが生じる可能性がある。 2.外生菌根圏バクテリアの多様性解析希釈平板法を用い、トガサワラ、ツガ、モミ、コナラ属実生について培養可能なバクテリアの種と菌根菌種を推定した。約300のバクテリアコロニーのうちBurkholderia、Dyella、Bradyrhizobiumなど全体の8割がProteobacteria門で占められた。一方、菌根菌の系統別にバクテリア群集を見てみると菌種によってバクテリアの構成には違いが認められた。
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